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夏炉冬扇抄

慈恵院の僧侶が、日々を綴ります
夏炉冬扇抄

「生事死大」 時をつげる木版の教え 

お寺でよく見られる「木版」。木槌で叩かれるその音は、時を知らせるだけでなく、深い教えをも私たちに伝えています。その木版には「生事死(ショウジ )(ダイ) 無常(ムジョウ)迅速(ジンソク) 光陰可惜(コウインオシムベシ) (トキ)不待人(ヒトヲマタズ)」と刻まれています。この短い言葉の中に、私たちが生きる上で大切にすべき考えが凝縮されています。今回は「生事死大」についてお話しします。

端的に言えば「生きること死ぬことについて考える事が大事」という意味です。しかし、私たちは普段、死という現実から目を背けがちです。それは、死に対する恐怖や未知への不安があるからでしょう。けれども、死を逃れる事は出来ません、それに向き合うことで初めて「生きることのありがたさ」に気づくことができます。

例えば、私たちは健康な時にはその価値に気づきにくいものです。しかし、体調を崩すと健康であることの大切さを痛感します。同じように、死を意識することは、今をどう生きるべきかを問い直すきっかけとなります。

木版に刻まれた言葉は、私たちに毎日を丁寧に生きるよう促す大切なメッセージです。

日々の忙しさの中で、ふとこの言葉を思い出す瞬間を作ってみてはいかがでしょうか。

その時、きっと「生きる」ということの重みと尊さを感じられるはずです。

慈恵院僧侶 板東


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